無法者「ンン~、いい天気だ。絶好の無法日和だな」
無法者「さて、今回のターゲットは……」
無法者「ヒャッハー! 今日はこの村で略奪してやるぜェ!!!」
無法者「おっ、第一村人発見~」
幼女「ひっ……!」
無法者「いいぬいぐるみ持ってンじゃ~ん? ずいぶんオンボロだが、これはクマさんかァ?」
無法者「略奪!」バッ
幼女「あっ、返してぇ!」
無法者「ここ……ほつれてンぜ」
幼女「え」
無法者「ふんふんふ~んと」ヌイヌイ
無法者「ほらよ……略奪即返却(キャッチアンドリリース)!」
幼女「あ、ありがとう……」
無法者「いいってことよ」ナデナデ
無法者「……ン?」
少年「や、やい! この村に何しにきた! 悪者め!」
無法者「ちょっと略奪にね」
少年「そんなことさせるか……!」サッ
無法者「オッ、その構え……ひょっとして騎士でも目指してるのかァ?」
少年「そうだ! ぼくは将来、騎士になる! 騎士になって村を豊かにするんだ!」
無法者「剣の腕がよけりゃ、騎士団は受け入れる……が、生半可な道じゃねェぞ?」
少年「ぼくは諦めない!」
無法者「いいねェ~、そういう将来を夢見る小僧に、たっぷりと剣術ってもんを教えてやるぜェ!!!」
少年「てやっ! でやっ!」
ガッ! ガッ!
無法者「もっと踏み込め。踏み込みが浅いと、剣に力が入らねェぞ」
少年「だあああっ!」
ガンッ!
無法者「イイ一撃だ」
無法者「期待してンぜ、坊や」ポンポン
少年「はいっ!」
無法者「……若い二人組、発見~」
青年「うわっ!」
村娘「誰……?」
無法者「お前ら……付き合ってンのか?」
青年「え! い、いや……」
村娘「そんな、ことは……」
無法者「フ~ン……だったら俺が略奪してもいいな、この女」ガシッ
村娘「きゃっ!」
青年「な……!」
無法者「あっちに小屋(サカリバ)がある。そこで楽しもうじゃねェか。なァ?」ペロリ
村娘「嫌っ……!」
青年「やめろォ!!!」
無法者「……ン? なぜ止める? お前、別にこいつのこと好きじゃねンだろ?」
青年「す、好きだ!」
無法者「ホ~ウ……」
青年「僕は彼女を愛してる!」
無法者「フン……だったら、しっかり守ってやれ!」グイッ
青年「は、はい……!」
村娘「青年君……」キュン
無法者「やれやれ……見せつけてくれるぜ」
無法者「あんたが村長かい」
村長「あ、あなたは……?」
無法者「無法者だ」
村長「ヒッ! なんのご用で……?」
無法者「りゃ・く・だ・つ」
村長「ヒイッ!」
無法者「いいねェ~、その表情(ツラ)最高だぜ!」
無法者「とりあえず――」
無法者「あんたの“腰痛”……略奪しとこう」
トトンッ
村長「あんっ!」ビクビクッ
村長「あ……腰の痛みがスーッと……」
村長「伸びるッ! 曲がっていた背筋が……伸びるぞォ!」シャキィン!
無法者「略奪完了」
村長「腰を治して頂いて、ありがとうございます」
無法者「あの程度、俺にとっちゃ朝飯前に飲む一杯の水前ってところよ」
村長「しかしながら、お礼は出来ませぬ。見ての通り、この村は貧しい……」
無法者「ああ……あんまり豊かとはいえねェようだな。みんな、いい奴だが仕事しすぎで疲れてる」
無法者「親が元気なら、さっきの子もぬいぐるみを直してもらってただろうしよ」
村長「こんな村から一体何を略奪するというので……」
無法者「村はずれにある……“蔵”を見せてもらおうかい」
村長「蔵……!? いけません、あれは……!」
無法者「いいから見せろォ!」
ギィィィ…
無法者「オウオウオウ、いーっぱい財(マネー)あンじゃねーの」
無法者「なんだい、こりゃ?」
村長「こ、これは……これは……」
無法者「まさか……私腹肥やしてンの?」
村長「違います……違います! これは……」
村長「領主様に支払う……税金でございます……!」
村長「これを納めねば、村人全員捕まってしまうのでございます……」
無法者「税……?」
無法者「それにしちゃ、チト払いすぎじゃネーの?」
無法者「こんなに払ったら、村の財(マネー)……全部持ってかれちゃうっしょ」
村長「仕方ないのです……。決まりなのですから……」
無法者「フーン、だったら……」
無法者「この金……全部略奪するぜ」
村長「え!?」
無法者「んでもって、ぜーんぶ略奪即返却(キャッチアンドリリース)!」
無法者「ほら、みんな!」
無法者「こんな無茶苦茶な税金、払わなくていいぜェ! 自分の生活費にしろ!」
「えっ……」 「返してくれるの!?」 「ありがたや……!」
村長「いけません!」
無法者「ン?」
村長「領主様は地獄耳! こんなことしたら、即座に――」
ドドドドド…
村長「ほら、この足音をお聞きなさい!」
村長「領主様が、部下を引き連れてこの村にやってきます!」
無法者「フフフ……これでいい」
無法者「俺はこうなるのを待ってたんだからな。ヒャッハーッ!」
村長「き、来た……! 領主様……!」
無法者「チャオ♪」
領主「……貴様は何者だ?」
無法者「無法者」
領主「目的は?」
無法者「略奪」
領主「何を?」
無法者「お前に納められるはずだった税金……いや、この村そのものを、お前から略奪するッ!」
領主「村人どもから略奪するのなら好きにしろ、というところだが……」
領主「私から略奪するのを許すわけにはいかんなァ~」
領主「よって……貴様は死刑ッ!」ビシッ!
無法者「……」
領主「全員かかれェッ!!!」
ワァァァァァ……!!!
無法者「俺は無法であって無情じゃないんでね……なるべく殺人(コロシ)はしたくない」
無法者「大人しく引き下がってくれないか?」
手下A「この人数相手になにいってやがる、バカが!」
無法者「引く気ないンなら……略奪するしかねーなァ」
手下A「略奪されんのはお前の命だァ!」
無法者「……」トンッ
手下A「あれ……? 目が見えない……」
無法者「ツボを突いて、視力を略奪させてもらった」
手下A「ひいいいいっ!」
無法者「お前……三日は暗闇(ダークネス)だぜ」
手下B「よくもォ!」
無法者「右腕を略奪させてもらう」ガシッ
ボキィッ!
手下B「ひぎぃぃぃぃぃぃっ!」
無法者「ン~、カルシウム不足だなァ~」
手下C「てめえ!」
無法者「耳たぶを略奪しよう」ビッ
手下C「いたぁぁぁぁぁい!」
無法者「ほれ、返却(リリース)」ポイッ
ドヨドヨ…
無法者「どうしたどうした!? 相手(オハナシ)にならねーなァ!」
「ひいい……!」 「次は何を略奪するんだ……」 「バケモンだぜ!」
「逃げろぉ~!!!」
ドドドドド…
村長「おおっ、あの大勢が逃げていく……!」
青年「敵わないと悟ったんだ!」
村娘「やったわ!」
無法者「奴らの戦意を……略奪させてもらったぜ!」
無法者「臆病者(ヤクタタズ)は逃げちまった……残るはお前だけだ」
領主「……」
領主「ZayZayZa~y♪」
無法者「?」
領主「あんな連中は初めから当てにしておらんよ」
領主「なぜ、私が国法で定められた以上に税金をむしり取るか教えてやろう……」
領主「この肉体を維持するためだァ!!!」バサッ
無法者「!」
村長「なんじゃ……!?」
青年「うわぁ……ムキムキだ……!」
村娘「なんて筋肉なの……!?」
無法者「これほどの筋肉……訓練(トレーニング)だけじゃあ得られねェーよな」
領主「正解(ピンポーン)!」
領主「この筋肉を維持するには毎日のように、高級な薬品を摂取しなくてはならなくてねェ……」
領主「とても金がかかるんだ」
領主「これぞまさに税金によって作られし贅沢な筋肉……名づけて」
領主「贅・筋・肉!!!」ムキメキィッ
無法者「無法過ぎるぜ……てめえ」
領主「なんとでもほざくがいい。領主には領民を生殺与奪(スキホウダイ)する権利があるのだ!」
領主「この雑巾を見よ」バサッ
領主「私にとって領民など……この雑巾のようなもの」ギュゥゥゥゥ…
領主「私に絞られて、絞られて、絞られて……! 最後は……!」ギュゥゥゥゥゥ…
ブチンッ!
青年「雑巾を引きちぎった!」
村娘「なんて怪力……!」
領主「こうなる運命(さだめ)なのだよ。理解したかね?」
無法者「理解(わか)ったぜ……てめえに領主の資格はねェ!!!」
領主「反省の色(カラー)無し! 死ぬがいいッ!」
領主「領主とは“猟主”ッ!」
領主「つまりッ! 無敵の狩人なのよォォォォォ!!!」ドドドッ
無法者(速いッ!)
ドゴォッ!
無法者「ぐはっ……!」グラッ…
領主「もらったァ!」ガシィッ
村娘「あっ……!」
青年「頭と足首を掴まれたぞ!」
領主「このまま貴様の全身を雑巾のように絞ってくれるわ!」ギュゥゥゥ…
無法者「ぐあああ……!」ミシミシ…
領主「絞って絞って絞ってぇぇぇ……どんどん体がねじれていくぞぉ!」ギュゥゥゥゥ…
無法者「ぐおおお……!」メキメキ…
村長「い、いかん!」
幼女「いやぁぁぁぁぁ!」
少年「やめろよぉぉぉ!」
領主「わめくな愚民どもッ! これが無法者の最期(バッドエンド)だァァァァァ!!!」
無法者「……」
無法者(自分の骨と骨同士の接着を……略奪ッ!)ガコンッ
スルルッ
領主「あ……?」
無法者「ッフゥ~……なんとか脱出(ぬけ)られたぜ」コキコキ
領主「こいつ、自分の骨を外して……!」
無法者「お前の実力は分かった……しょせん単なる腕力バカだ。略奪してやる」
領主「ほざけッ! また捕まえて今度こそ廃棄物(バラバラ)にしてくれるわ!!!」
でも好き
領主「ぬおおおおおおおッ!!!」
ザシュッ! ズバッ!
領主「あ……?」
領主「腕が……動かない!?」ブラーン
無法者「手刀で腕の腱を切った……お前の筋力を略奪させてもらった」
領主「な……!?」
領主「おのれェェェェェ! ならば蹴りでェェェェェ!!!」ブオッ
無法者「往生際(アキラメ)が……悪いぜ! ド悪党ッ!」
ザンッ! ズバッ!
領主「あぎゃあああああああああああ!!!」
無法者「足の腱も切った……もう歩行不可能(イモムシ)だ……」
領主「あ……ああ……」
無法者「これじゃもう領主すンのは無理だな……てめえは終わりだ」
無法者「これにて――」
略 奪 完 了 ! ! !
ワアァァァァァ……!
村長「あの鬼領主を倒して下さるとは……!」
村長「おかげで村は救われました……。いえ、この周辺の村や町全てが……」
無法者「OVERだぜ」
青年「無法者さん、ありがとう!」
村娘「私たち、きっと幸せになります!」
無法者「お前さんたちなら、村の名物夫婦になれるぜ」
幼女「クマさんもよろこんでる!」
無法者「ありがとうよ。熊に喜ばれるなんてなかなかできねえ経験(エクスペリエンス)だ」
少年「無法者さん!」
無法者「ん?」
少年「ぼく、もっと強くなる! あなたぐらい強くなって、絶対騎士になる!」
無法者「オウ……強くなるのを待ってンぜ! 坊や……いや、未来の騎士!」
無法者「さて……略奪も終わったし、帰るとすっか!」
……
……
騎士A「お帰りなさいませ、団長」
騎士B「いかがでした? 久々の休暇は?」
騎士団長「うむ、堪能させてもらったよ」
騎士A「そうですか、それはよかった」
騎士団長「私の留守中、なにか異常はあったか?」
騎士A「これといって特にありませんが……一つだけ」
騎士A「地方を治めていたある領主が、謎の無法者によって再起不能にされてしまったようです」
騎士B「屋敷を調べたら、相当私腹を肥やしていたようです。はっきりいって自業自得ですね」
騎士B「許されるのなら、騎士団の手で処罰したかったですよ!」
騎士団長「たとえ問題があっても、領主は領主だ。騎士として、そのような発言は慎むべきだな」
騎士B「ははっ、申し訳ありません!」
騎士団長「後任は?」
騎士A「優秀な人間が領主になります。もう心配ないでしょう」
騎士A「ところで、心なしかご機嫌ですね」
騎士団長「うむ……」
騎士団長「もしかすると、近い将来、この騎士団に優秀な人材が入ってくるかもしれんぞ」
騎士B「え?」
騎士団長「では陛下との謁見があるので、失礼する。くれぐれも訓練を怠らないように」
騎士AB「はっ!」
騎士A「……」
騎士A「いやー、いつも凛々しくて団長はかっこいいなぁ……」
騎士B「ホント、騎士の鑑だよ……」
騎士団長「……」ザッザッザッ
騎士団長「とても清々しい気分だ……。今日から国のために頑張ろう!」
騎士団長(やはり、日頃の重圧(ストレス)は無法で晴らすに限る、な……)
― 完 ―
騎士団長はっちゃけすぎw
乙
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